八いつ賞2006
2006年度卒業設計提出作品
森田 慧 
Stoa Flora-名古屋花卉市場再編計画―
井上 薫
地下鉄廃熱利用の計画案
田島 栄子 
Sweet Basket -明道町菓子・玩具問屋街拠点施設計画-
梶田雄平
キル=ツナグ工房
佐藤みな子
迷いの先に見えるもの
下村将之
四日市野菜工場センター
西村健
マチノタネ
平松孝一
LAYERD SPORTS
山田和幸
森への架け橋
2006年度審査経過
審査員評

 30数年ぶりに訪れた建築学科のエントランスは全く変っていない。昔のそのままであることにまずびっくりして、卒業設計の講評に立ち会いました。
学生の設計案に対する説明の後、先生からの厳しい質問や指摘、言葉の攻防に学生さんに同情しながら、建築学科だったわれわれの学生時代と
変っていないなあと感じていました。違いは、模型の大きさ、その材料に透明なアクリルや光沢ある黒アクリルなどを用いプレゼンテーションにかける
熱意に格段の差を感じたことでした。

 八いつ賞となった森田 慧 さんのStoa Flora はグリッドプランの建築的なまとまりのある提案でした。機能的な導線の処理や透明アクリの建築的な
表現において際立って安定感を感じさせました。建築的であるこの点を評価して推薦しましたが、もうひとつ何か物足りなさを感じさせました。
 他の提案の中では次の2作品に好感を持ったので記します。
 井上 薫さんの地下鉄廃熱利用の計画案はなかなかよい着眼点でしたが廃熱の利用方法がわかりにくいこと、建築の形にするプロセスが曖昧で
惜しい感がしました。いわゆる建物にとらわれずにもっと自由に提案すると説得力あるものとなったのではと思いました。
 田島 栄子さんのSweet Basket  人と人をつなぐものとして駄菓子に着眼し、駄菓子屋さんのお店をスーパーマーケットとは違うコミュニケーション
装置として計画するというもので大変興味をそそられました。しかし計画案は駄菓子の箱のBOXを構造体とする提案となってしまい、すっきりと整然と
しすぎていて駄菓子店の雑然さや賑わいある空間の計画とならなかったことが残念に思われました。(鳥山敦生)

今年は9点の卒業設計作品が出ました。今年は講評会に出席することができましたので、それぞれの作品の説明を受け 先生方との質疑応答も
聞きながらの選考です。それぞれ秀作ばかりで “乙乙”付け難い状況の中 短時間で一年の秀作の説明を受け判断するのはなかなか難しいもの
です。
 最近はCAD,CGがすっかり定着し、プレゼンテーションでの差異が少なくなってきている上に、説明の仕方も網羅的で特徴が無く、模型もお金と労力
をかけているので 見栄えはするのですが インパクトに欠けます。それぞれの作品にはテーマがあり それを根拠付ける周辺調査もされていて、
一見アイデアがあり、スマートに美しく解かれてうまくまとまっているように見えます。でも何かが欠けている気がしてなりません。
 八いつ賞の選考をさせていただくのは今回で3回目になりました。私は 選考にあたり、 すごくこだわりを持ち ほとばしるエネルギーが感じられる
のもがあればそれを最大限評価する減点法とは違った視点で選びたいと個人的に思っています。
 今回全ての作品の説明を受けた後、強く心が惹かれる作品が少ないのです。システムとか工法とか問題提起とかではなく、建築自体へのこだわり
が少ないように思います。なるほど 模型を見ると大きく立派ですが、周辺ばかり目立ち 肝心の作品はその中に埋もれているではないですか。
図面は美しいプレゼンテーションで飾られていますが、肝心の平面とか立面とか断面とかは 記号のように希薄で空間や機能が伝わってきません。
 その中で 森田 慧さんの花卉市場を選びました。上記の視点で見たとき 一歩抜き出ていると感じたからです。(小林 聡)

歴代受賞者(敬称略)
2006年度 森田 慧 Stoa Flora
2005年度 福田純一 HIROSHIMAの記憶
2004年度 浅見泰則 水の駅
2003年度 谷田侑美子
2002年度 安藤由里子
2001年度 平野章博
2000年度 置塩淳夫
1999年度 並松史郎
1998年度 若見招子
1997年度 該当者なし
1996年度 原 優子
1995年度 大西高広
1994年度 大崎太郎