八いつ賞2008
2008年度卒業設計提出作品
加藤祐樹
PARK TERMINAL 
市川智章 今和泉 拓
王 司晨 亀嶋一矢
「linking park」
小久保亮佑
「間隙を縫うように -都市生活者の拠り所」
杉本 南 塙 雄太 山田裕喜
北野拓哉 土屋雄大
2008年度審査経過
審査員 鳥山敦生(S48年卒)、藤吉洋司(S49年卒)、安井聡太郎(S59年卒)
審査員評
 今回で3年目の審査をすることになりました。今年強く感じたことは、プライバシーとパブリックの
とらえ方に世代間格差?ともいうべき大きな違いがあることです。閉じたパブリック・開かれたプラ
イバシーという説明がありました。このことは最近多くの事例で気づかされているのですが、卒業
設計の中にもやはり出てきています。ある先生のコメントは<個と個の関係が電車の中での乗客
の関係に近い>と実に言い得て妙でした。
 今年の八いつ賞は計画案の重要な部分が欠けているという物足りなさを感じるなかでの選考と
なりました。11案提出があり、私の選んだ3案について感想を記します。
 加藤祐樹さんの<PARK TERMINAL>
  名古屋駅にTERMINAL駅つくることで現在の過剰気味の混雑を解消しながら公園と一体に
  なった立体的な開発をするという提案です。ターミナル駅という提案は人と駅の名古屋には今
  までにないあたらしい関係をつくり出し魅力的な街づくりの起爆剤になりそうなおもしろい提案
  だと思いました。しかし、駅の廻りでドラマが生まれそうな場がないのが物足りなさで残念なと
  ころです。建物は新しさにはやや欠けますが廻りの超高層ビルとの造形的なまとまりを感じさ
  せ、今年の八いつ賞となりました。
 北野拓也さんの<TOYAMA METAL WORK CENTER> 
  富山電気ビルディングのリノベーションです。こういった提案は古い物と新しい物の関係にデ
  ザインの妙があるのですが、その関係がデザインされていません。新しい部分のデザインは
  手堅いデザインでそれなりにまとまっていますがリノベーションの意味が希薄です。デザイン
  センスを感じさせ、今後に期待します。
 小久保亮佑さんの<都市生活者のより所(間隙を縫うように)>
  良く理解できないが気になる提案でした。都市生活者に自分のいごこちのいい場所を見つけ
  出せるいろいろな場所を提供するというのが趣旨です。壁と床も屋根もすべて2重の板でつく
  り、2枚の板の隙間は、外部と内部の間の隙間空間となり、おそらくは外部と内部の混じり合い
  新しい空間が生まれそうな予感をさせますが、この部分の表現がされていないのが残念でした。
  この人もデザイン力を感じさせました。今後に期待します。(鳥山敦生)

提示された11点の全体的な印象ですが、テーマ設定については、都市インフラやまちの居住や
くらしに問題を求めるもの、防災や建物再生など時代の求めに対応したもので、それを解く糸口には
各人独自の発見、アイデアやこだわりが見え、評価できました。ところが、自分の意匠的な発想に
振り回され、テーマへの答えが甘くなり、薄れてしまっている気がしました。そのことはプレゼンテー
ションにも投影されています。建築にはコミュニケーションの力が必要です。相手に伝える努力は、
自分の提案を磨き上げることにもなります。テーマへの回答が的確になされているのかが最重要と
思います。もう1つ気がかりだったのは、都市の生活をテーマとする何点かに、個の生活が単なる
風景として捉えられ、ラッシュの電車よろしく体は密着していても無視する状態に似た印象を持ちま
した。集まって住む魅力は若い世代の中には感じられないのか?見過ごして良いのか不安になり
ました。とはいうものの、どの案にも各個人のこだわりが感じられたことは、大学で自分なりの何か
を掴んだ証であり、期待を持たせました。
 八いつ賞に選んだ加藤祐樹さんの作品はJR名古屋駅の北に名鉄のターミナル駅を設けることを
発端に、4棟に分節化されたスーパーストラクチャーの多機能複合施設とその大きなピロティにター
ミナル駅、公園広場を抱えるというスケールの大きな計画です。ターミナルと建物からなる空間がそ
の機能のみにとどまり、楽しく豊かな都市生活をイメージさせない点に物足りなさを感じましたが、
テーマ設定、都市スケールの建築的提案、表現力など一定の高いレベルでまとめられており、八い
つ賞にふさわしい作品と評価しました。(安井聡太郎)

歴代受賞者(敬称略)
2008年度 加藤祐樹 PARK TERMINAL
2007年度 山口智三  Learning from Catastrophe -災害資料館計画-
2006年度 森田 慧 Stoa Flora
2005年度 福田純一 HIROSHIMAの記憶
2004年度 浅見泰則 水の駅
2003年度 谷田侑美子
2002年度 安藤由里子 Flower Factory MUseum
2001年度 平野章博 飛鳥の架橋
2000年度 置塩淳夫 TRANSTATION
1999年度 並松史郎 Cultivation-space 定年帰農者の農村
1998年度 若見招子 CHILDREN PATH PROJECT
1997年度 該当者なし
1996年度 原 優子 TERMINAL STUDENTS CENTER
1995年度 大西高広 Yacht Workshop
1994年度 大崎太郎 MEDIA NORD in NAGOYA